人間の諸々からは守れない。
■以下、補足の文章。
妖怪から守れても人間の諸々からは守れない、的な話なんですけど。
連勤で疲れ、会社で立ちくらみなどして、不注意で階段から滑り落ち運悪く頭ぶつける水木さん。ショックで気を失い病院に運ばれる。診断結果は軽い脳震盪と、捻挫や打撲、睡眠不足。
病室には同僚くんが付き添う。水木さんの自宅に電話をして父に現状を伝える。
「水木のご家族の方ですか?」
連絡ついた事にほっとする同僚くん。
父が来るまで同僚くんが病室で見守る。
「こいつ無理すんだよなぁ、寝不足やらで人間簡単に脆くなるし最悪死んじまうってのにな」とか考える。
慌てた父が到着。父に病状を伝える。
「まぁ命に別状は無いらしいですよ。さっき一瞬起きましたが、少し混乱してて今はまた寝てます。でもぶつけた場所が場所なので明後日までは仕事は休みだと、改めてこいつに教えてあげてください」と淡々と伝達する。
家族っつっても似てねぇなあ、とか思いながら詮索はしない同僚くん。
「人間は脆いのぅ……」と呟く父。
言い方が妙な気もするが、先程己も同じこと思ってたしな、と考える同僚くん。
「そうですね。些細な事で簡単に人間は死んだりもしますからね」
同僚は父の事を普通に人間だと思ってるので、世間話として合わせる。
「階段からころげただけで死ぬのか…?」
父は衝撃を受ける。人間の脆さはそこまでか、そんなにか、そんな程度で壊れるのか。
「打ちどころが悪ければ……?今回は大丈夫でしたが。」
同僚くんがふと父を見ると、驚いたような怯えたような苦しそうな形容しがたい表情をしている。
見るからに大人な父、世間一般常識としてはそんな事どこかで知るだろうよ、と思う同僚くん。
しかし父とは初対面、何かしらの琴線に触れたのかもしれない。
「とりあえずご家族の方もいらっしゃったので、自分は会社に戻ります。また明日お見舞いにでも来ますね」病室を後にする同僚くん。
1人残される父。
「人間はそこまで脆弱であったか。頭では理解しておったが、そうか……。妖怪絡みなれば察知できるが、この様な事では分からぬよ……勝手に居なくなってくれるなよ……」
水木の点滴を受けている手をさする。いつもより冷たい。まるで自分の体温と同じみたいだ。
頭で分かってても、実感しているのとは違う。あぁ、そうか、こういう事が我らと人間とでは異なるのか。
感覚が違う、捉え方が違う、実際に起こらないとわからない。
という話。