某日、トレーナーが休暇を終え出勤したその早朝。
「ちょっ、やめっ、やめろォ!?フィジカルの差で押してくるのは狡いぞトラン?!」
「トレちゃんがウチの乙女心を傷つけたからだー!フッフッフ!その整った前髪·····なんかもうボサボサじゃね?」
生徒達がようやく登校し始めた頃、トレーナー室は喧騒に包まれていた。
照れ隠しでトレーナーを組み伏せんとするトランセンドと、必死の抵抗を試みるトレーナー。
トレーナーの髪を滅茶苦茶にしてやろうと目論むトランセンドだったが、既に寝癖だらけの頭に小首を傾げた。
「実はちょっと寝坊気味でな。治す暇なかったらそのまま全力疾走してきてな?そしたら全然間に合ったから寝癖治さないとなーって思ってたところにトランが来て今この状態だよ。分かったら離してくれ」
「別にそのままでよくない?結構面白いよ今」
「面白くちゃダメなんだよいいから早くどいてくれ?この体勢凄い身の危険を感じる」
手四つの状態でソファーに追いやられながら顔を引き攣らせるトレーナー。
その気になればいつでも組み伏せられるが、そのつもりはトランセンドにはなく。
トレーナーも彼女がじゃれているだけだということは何となく分かっていた。
「ぶーぶー、もうちょっと遊んでもいいじゃんか〜」
別段怒っている訳でもなく、本当に遊んでいただけだったトランは渋々手を離す。
「隙を見せたなトラちゃん!よくもやってくれたな寂しんぼウマ娘ェッ!」
「ぐぁぁぁ?!卑怯だぞトレちゃん!?ちょ、ホント髪乱れるじゃんよ!」
手を離した瞬間、待ってましたと言わんばかりにトランセンドの頭を撫で回すトレーナー。
彼は有言実行(できる範囲で)の男であった。
「ふっ·····これが大人のやり方だ!よーしよしよしよしよし!」
「やめろトレちゃん!それ多方面に怒られるやーつ!」
ワイワイと文句を言いながらも別段嫌がる素振りはなく。
どこか楽しそうにじゃれ合う2人終いにはトランセンドもトレーナーの髪を荒っぽく撫で始め。
「ぶはっ!トレちゃん髪おかし〜♪」
「トランも人のこと言えないぞ〜。ボサボサだな〜」
滅茶苦茶になったお互いの髪を見て2人揃って笑い合う。
その姿はトレーナーと担当の関係と言うよりも仲のいい友人のように自然体で。
当たり前のようにソファに隣合って座り、髪を治しながら。
「そういえばさ、トレちゃんこの休みの間どうだった?」
「んー?あれ、ある程度は話したよな?旅館行ったけど満室で·····」
「そうじゃくて移動中のこととか。まだ時間あるからさ?」
やがて彼女が肩を寄せてトレーナーを見上げる。
好奇心に満ちた顔で。
「君が見たものとか、思ったこと。ウチの知らないことさ?色々教えてよ。ウチもトレちゃんがいない間見つけたワクワクする話教えるよん。·····まだ誰にも言ってない特別な情報だから。しーっのやつね♪」
人差し指を口元に添え、イタズラっ子のように笑った。
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※多分付き合うより同棲の方が早い
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