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人里で出会った『息子にそっくりな男の子』を自宅に連れ込んだ純狐。二人分の紅茶を淹れ、向かい合って座ると、純狐の胸中には昔に戻った様な郷愁と、亡くした筈の息子への愛情が溢れた。
純狐はかつて息子に向けていたのと同じ眼差しで少年を見つめるが、少年は緊張しているのか俯いたまま声も発さず、出された紅茶にも口をつけなかった。そんな様子の少年に、純狐は優しく声をかける。
純狐「ふふ…緊張しなくてもいいのよ、ぼうや。自分の家だと思って、くつろいでちょうだい。」
少年は不安げな目で純狐を見た。
純狐「…そんな顔しないで。大丈夫よ、私はただ…あなたとこうしてお茶を飲みながら、お話がしたいだけなの。それだけで満足だから、だから…私とお話しましょう?」
その言葉を聞き、少年は小さく頷くと、ミルクと砂糖の入った紅茶を少しだけ飲んだ。
純狐「ありがとう。じゃあ、まずは…あなたのお名前。教えてくれるかしら?」
少年「えっと…『みやと』…です。」
純狐「…ふぅん。『みやと』くん…というのね。お父さんとお母さんは居るかしら?」
みやと「あの…お母さんは…いなくて。今は…お父さんと…。」
純狐「あら…、そうなのね。…お父さんはどんな人?優しい?」
みやと「…。」
そう質問された少年は、バツが悪そうに目を逸らし、黙り込んでしまった…。