仮面ライダーダブル、今回の依頼は‥‥
◯[依頼人]風都の大手観光会社
◯[依頼内容]「風都海岸新興リゾート施設(旧ZENON)をエコテロリストの爆破予告から守って欲しい」
今回の依頼人は風都の大手観光会社。かつて禅空寺家の私有地であったZENONリゾートと一帯の土地を買い取り、振興リゾート地としてリニューアルオープンしていた。
なお禅空寺家の次女・禅空寺香澄はかつてズー・ドーパント事件の依頼人である。
その振興リゾート地に、風都を中心に爆弾テロ等の過激な活動を行うエコテロリスト集団からの「爆破予告」があったという。彼らは、自然保護の名目で風都の大企業や娯楽場を対象に破壊活動を行っているが、依頼人の会社は旧ZENONの敷地内の自然をこれ以上開発しないという確約の元に事業を進めており、むしろ風都の環境保全に精力的な立場である。有名企業を標的とする事で自分達を誇示する一方的な暴力でしかない。
翔太郎は街を泣かせるテロから依頼人を守る為に、再び旧ZENONを訪れた。今回はフィリップも一緒である。
旧ZENONは、海岸沿いの平地にある宿泊地と、それを取り囲むような山並全域という広大な敷地を持つ。このどこかに爆弾が仕掛けられているとすれば探すのは一苦労である。メモリガジェットを用いて二人は手分けして爆発物を捜索する‥‥そんな中でも、フィリップは時折、周囲の山々の中でも一際高い山・・・特に山頂付近に立つ大きな黒い建物と、山の麓にあるペンションに視線を向ける。
「禅空寺香澄のことが気になるのか?フィリップ」
現在の振興リゾート地は売却後は、かつての禅空寺家の手を離れている。今回のテロに狙われている依頼人と禅空寺香澄はあくまでも無関係である。とはいえ、爆破予告のあったリゾート地のすぐ近くの香澄の「家」が被害に巻き込まれる可能性もある。
「心配なら香澄さんのところに行ってやれよ」
「問題ない。今回の事件に彼女は無関係だ。依頼をほったらかしにして現場を離れるのは事務所の主義に反する」
確かに「依頼人を守る」のが、鳴海探偵事務所の絶対理念である。しかし、安楽椅子探偵スタイルのフィリップが現場に足を運ぶのは、そもそも珍しい事だ。香澄と彼女の「家」を案じているのは容易に想像できた。
その時、海岸線で突然、大きな轟音と振動を交えた「爆発」が起こった。それは小規模な火山の噴火そのもの。海岸沿いはあっという間に噴煙に覆われ、地面から噴出する溶岩が周囲を飲み込み始めた。
「爆弾テロ」や「爆破予告」という言葉から爆弾による犯行にばかり注意を払っていたのが間違いであった。まさか「火山の爆破」で攻撃してくるとは!
しかし、この一帯の地域に火山帯は存在しない。明らかにガイアメモリが引き起こした災害であった。
やがて噴火口から姿を表すドーパント。その姿を見た翔太郎は、かつて戦ったマグマ・ドーパントを連想するが、フィリップは冷静にメモリの正体を推測した。
「あれは、マグマじゃない。メモリの種類は‥‥」
◯[メモリの種類]V(VOLCENO):火山の記憶
◯[メモリの使用者]環境テロリスト・リーダー
火山の記憶を内包したドーパント。
マグマメモリと似た属性の記憶ではあるが、マグマが火山噴火の一つの側面であるとすれば、ボルケイノメモリは噴火に伴う全ての火山災害の特性を備えている。
ボルケイノ・ドーパントが存在する周囲の大地は、活火山のようになり、広範囲の大地を飲み込む規模の溶岩流、火山灰を含む硫化ガスの拡散、岩石の飛散、空中放電、熱水の噴出等の様々な災害を引き起こす、自然災害の化身である。
全ての動物の力を持つズー・ドーパントが「一人動物園」と例えられるならば、ボルケイノ・ドーパントは「一人火山博物館」と言えるだろう。
仮面ライダーは、ボルケイノ・ドーパント本体との戦いのみならず、周囲の災害からの人命救助にも対応を要する
ボルケイノ・ドーパントを中心に溶岩と火山灰が拡散する。宿泊施設のある平地を溶岩が飲み込むように拡がっていき、火山灰と硫化ガスが漂い呼吸と視界を妨げる。フィリップと翔太郎は燃え盛る施設から負傷した依頼人の社長や社員達に溶岩を避けて出来るだけ遠くに逃げるように指示を出した後、ダブルに変身、ボルケイノ・ドーパントと対決する。
だが、ボルケイノは強敵であった。本体も高熱を帯びている上に、ミサイルのように翔ばしてくる火山弾や、火山雷によって近づく事すらままならない。
戦いの中で、ダブルの「フィリップの意思」が、香澄のペンションに溶岩流と火山灰の噴煙が迫るのを確認した。このままでは、香澄の「家」が溶岩に飲み込まれる!
普段は冷静なフィリップから珍しく焦りの感情が、ダブルドライバーを通じて翔太郎にも感じ取れた。
「守ってやろうぜ、相棒。彼女の家を」
だが、ボルケイノ・ドーパントはダブルを高熱と火山弾で足し止めする。ボルケイノは仰々しくも語る。
「俺は大自然の脅威そのもの。愚かな人間どもに、俺の力を見せつけてやる!」
大自然の脅威か‥‥確かに、自然とは常に美しい訳でも、恵みだけを与えてくれる訳でもない。火山噴火は正しくにその典型だろう。だが、自分の力を誇示するためだけのコイツに「大自然」を語る資格はない
「さあ、お前の罪を数えろ!」
ダブルはサイクロンジョーカーエクストリームに変身し、必殺技ダブルエクストリームでメモリブレイク!直ぐ様、山の麓にあるペンションに駆けつけた、ダブルはペンションに背を向けそれを守るような立ち位置で、プリズムビッカーをかまえた。
\サイクロン・ヒート・ルナ・メタル マキシマムドライブ/
ビッカーファイナリュージョンで強力な盾を生み出し、山と麓のペンションに迫り来る火砕流と溶岩流を押し返した!
火山灰の一部は山の木々に降りかかったものの、山の全滅は免れた。
フィリップの心には香澄の大切は場所を守れたことに安堵する思いと同時に、少しばかりの蟠りが残った。香澄の山に溶岩が迫っているのを見た時、一瞬だけでも依頼人の事より彼女と彼女の山の安否の方へ関心が向いてしまっていた。それは探偵としての矜持に反すると‥‥。
だが、翔太郎はフィリップにこう語る。
「彼女だって、かつての俺達の依頼人だ。それに気付いてないのか、フィリップ?今回の依頼人も俺達はきちんと守り通してるさ」
翔太郎に連れられ、フィリップは山の上にある黒い建物に向かった。建物の中には、怪我をした依頼人達が逃げ込んでおり、香澄も彼らを迎え入れ手厚く看病していた。
平地を飲み込む溶岩から逃れる為に依頼人達は何処へ逃げるか‥‥心理的に出来るだけ高い場所を目指し、なおかつ降りかかる火山灰を避けるためには屋内に避難するはず‥‥翔太郎は、負傷した依頼人達が山の上の黒い建物を頼るはずだと推理していた。そして、その山の麓に迫る溶岩と火山灰を押し返したことで結果的に依頼人達を守っていたのだ。
普段ならばフィリップの方が冷静にこれくらいの推理は出来ているはずだ。香澄の危機にそこまで平静さを失っていた自分に驚く。
翔太郎「Nobody's perfectさ、相棒。これもお前の優しさだ」
香澄の手には、ペンションから避難する際に唯一、持ち出していた帽子が抱かれていた