二乃が高熱を出した翌朝、四葉がゴホッゴホッ!!ゲホッゲホッ!ヒューッ!! と激しく咳き込みながら部屋から出てきた。
「お母さん…コンコン出るーッ!ゴホッゴホッ!ゲホッゲホッ!ヒューッ!!ヒューヒューッ!!」
いつもなら朝から飛び跳ねるように元気な四葉だが、今日は足取りも少し重く、目もとろんとしている。それでも、顔を上げてニコニコしながら話している。しかし、咳のくしゃみが止まらない。
「ンンッ…ハックショーン!!ヘックショイッ!ズビッ…!ゲホッ!ゴホゴホッ!!ヒューーッ!!」
その間も四葉は荒い息をしながら、お母さんの顔を見上げた。
「二乃の風邪がうつったのかしら…?」
お母さんは心配そうに四葉の額に手を当てる。額はじんわりと熱を帯び、汗が滲んでいた。
「うーん…ちょっと熱いわね」
すぐに体温計を手に取り、脇に挟ませる。ピピッ、と電子音が鳴り、表示された数字は 38.1℃。
「熱があるわね」
「ゴホッ!ゴホゴホッ!ズズッ…!ヒューッ!!ヒューヒューッ!!今日、学校休みになる?」
四葉は咳き込みながらも目をキラキラさせる。
「二乃とお揃い!ゲホッゲホッ!ヒューヒュー…!ズズッ!」
咳で苦しそうにしながらも、どこか嬉しそうに笑っている。
「はいはい、でも無理しないでちゃんと休むのよ」
お母さんは四葉の額に冷えピタを貼り、マスクをつけさせる。
「しっかり寝て、早く良くなりましょうね」
四葉はゴホッゴホッ!!と咳をしながら頷き、いったん布団に横になる。しかし、じっとしていられないのか、むくりと起き上がると、ガチャンッ!!! と大きな音を立てて二乃の部屋の扉を開けた。
「二乃ーッ!!ゴホッゲホッ!!私も熱出ちゃったー!ゴホゴホッ!見て見てー!ヒューヒュー…!冷えピタとマスク!ゴホッゴホッ!!」
二乃の枕元まで駆け寄り、満面の笑みで報告する。
「二乃とお揃いだねー!ハックショーン!!ヘックシュン!!ゴホッゴホッ!冷たくて気持ちいいよ!ズズッ…!」
しかし、二乃の様子を見た四葉は、思わず息を飲んだ。
二乃の顔は真っ赤に染まり、唇も少し紫がかっている。額や首筋にはびっしりと汗が浮かび、布団の中も蒸し暑いのか、ぐったりと体を投げ出していた。
ゴホッゴホッ!!ヒューッ!ハックショイッ!!ズズズズッ!!ハァッ…ハァッ…!ヒューヒューッ!!
咳とくしゃみが途切れることなく続いている。鼻声で、息をするのも辛そうだ。
「四葉…ゴホッゴホッ!!ヒュー…ヒュー…!!ズズッ…! 辛いから静かにしてなさい…ゴホゴホッ!ヘックショーン!!ズズズッ!!」
「私の熱が移ったのなら…ゴホッ!!ゲホッ!!私みたいになるわよ…ゴホッゴホッ!ヒューッ!ハァ…ハァ…ッ!!ヘックショーン!!!ズズッ!」
そう言いながら、二乃は震える手で体温計を掴み、再び脇に挟んだ。数秒後、ピピッ という音が鳴り、画面に映し出された数字は 40.3℃。
「二乃、大丈夫…?すごい熱…ゴホッゴホッ!ヒューヒュー…!」
四葉は咳とくしゃみをしながらも、二乃を心配そうに見つめた。
「大丈夫!ゲホッゴホッ! 私は元気だからね!」
そう言いながら、四葉は慌てて自室に戻った。
⸻
昼前
ゴホッゴホッ!!ゲホゲホッ!!ヒューーッ!!ヒューヒューッ!!ハックショーンッ!!ヘックショーンッ!!!ズズズズズッ!!
激しい咳とくしゃみで四葉は目を覚ました。
「う…うぅ…ゴホッゴホッ!ヒューッ!!ズズッ!ハックショーン!!!ヒューヒュー!!」
喉が焼けるように痛く、鼻水は止まらない。頭がガンガンして、視界もぼやけている。
「…しんどい…」
布団の中でうずくまっていると、お母さんが部屋に入ってきた。
「四葉、咳がすごいわね。ちょっと熱を測りましょう」
体温計を取り出し、汗ばんだ脇に差し込む。その間も四葉の咳とくしゃみは止まらない。
ゴホッゴホッ!!ゲホゲホッ!!ズズズッ!!ヒューヒューッ!!ハックショーン!!ヘックシュンッ!!!ヘックシュンッ!!ゴホゴホッ!!!ヒューーーッ!!!ハァッ…ハァッ…!!
体温計がピピッと鳴り、お母さんが画面を確認する。
「…40.3℃ね…!」
お母さんは驚いた顔をしながら、急いで冷えピタを取り替え、マスクも新しいものに交換する。
「すごい熱ね…」
四葉はもう、今朝のような元気はなく、布団の中でぐったりしていた。
「…うぅ…しんどい…ゴホッゴホッ!ヒューヒュー…!」
鼻水は止まらず、喉の痛みが増していく。咳もひどく、息をするのも苦しい。
(こんなに辛くなるなら、もっと大人しく寝てればよかった…ゴホッゴホッ!ハックショーン!!ヒューーッ!!)
お母さんは濡れタオルを持ってきて、そっと四葉の額を拭った。
「今日はしっかり休んでね」
「…うん…ゴホッゴホッ!ズズッ!ヒューヒューッ!」
「…お母さん…ゴホッゴホッ!ゼェゼェ…!」
かすれた声で呼びかけると、お母さんがすぐに傍に寄ってきて、そっと四葉の額を撫でた。
「どうしたの、四葉?苦しい?」
「うん…ゴホッゴホッ!ゼホッ!ハァ…ハァ…!喉、すごく痛い…ゴホゴホッ!ズズッ!」
涙目になりながら咳き込む四葉の背中を、お母さんが優しくさすった。冷たいおしぼりで額を拭われると、少しだけ楽になった気がする。
「お母さん…ぎゅーして…」
四葉は両手を広げて甘えるように言った。お母さんは微笑みながら、四葉をそっと抱きしめた。
「こんなに熱が高いのに、甘えん坊さんね」
「だって…しんどいもん…ゴホッゴホッ!ゼェゼェ…!」
お母さんのぬくもりに包まれながら、四葉は少しだけ安心する。しかし、またすぐにゴホッ!ゲホッ!ゼホゼホッ! と激しく咳き込んでしまう。
「…お母さん、二乃は…大丈夫?」
苦しそうにしながらも、四葉は隣の部屋の二乃のことを気にかけていた。
「二乃もまだ熱が高いわ。でも、ちゃんとお薬を飲んだから、少しは落ち着いてきたのよ」
「…よかった…でも、ゴホッゴホッ!ゼェゼェ…! まだしんどいよね…」
四葉は心配そうに眉を寄せながら、布団をぎゅっと握りしめる。
「三玖や一花、五月にはうつってないの?」
「今のところは大丈夫みたい。でも、あなたたち二人がこれだけ苦しそうだから、みんな心配してるわ」
「そっか…ゴホッゴホッ!ゼホゼホッ!うつったら…かわいそう…」
四葉はぼんやりと天井を見つめながら、咳をし続けた。お母さんがコップに入ったスポーツドリンクを持ってきて、四葉の唇にそっと当てる。
「少しだけ飲める?」
「…うん…ズズッ…」
喉が痛かったが、少しでも楽になればとゆっくり飲む。しかし、飲み込んだ瞬間、刺激でまたゴホッゴホッ!ゼホゼホッ!ハックショーン!! と咳とくしゃみが止まらなくなってしまった。
「ゆっくりでいいのよ。無理しないで」
お母さんが優しく微笑みながら、四葉の背中をまたさすってくれる。四葉は目を閉じながら、その温もりを感じていた。