前話(
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「会場の皆様、お待たせしました!今回はUBCより華麗な戦士がカオスヒートに参戦です!
・・・164㎝、49㎏、華麗なる銀髪の天使、藍野ォォォ美紗ァァァァ!!」
リングインした美沙をリングアナの絶叫と観客の大歓声が出迎える。
端正な顔立ちにグラビアモデル並みのプロポーション。美しき女戦士の登場に会場は熱狂のるつぼである。
『まだ対戦相手は現れないわね・・・いったい誰なのかしら。』
リングサイドの麻里奈が心配する中、反対のコーナー側にスポットライトが当たる。対戦相手の登場のようだ。
そして花道を悠然と歩いてくるのは褐色の肌に髪を金髪に染めた大男であった。男は笑みを浮かべたままリングインする。
「さあ皆様ご注目ください!華麗なる藍野選手に対するは・・・南米からのゲストです!
189㎝、91㎏!『褐色の弾丸』、エリオットォォォ・・・ゴワハンドォォォ!!久しぶりのカオスヒート降臨です!!」
リングアナの絶叫を聞いてリングサイドの麻里奈の顔からサッと色が引いた。
『・・・エリオット、冷血紳士エリオットですって!!まさかコイツがまた出て来るなんて・・・!』
カオスヒートの美しき女性格闘家目当てでちょくちょく観戦にも来ていた麻里奈、それ故に「冷血紳士」エリオットの強さは彼女もよく知っていた。特に去年・・・このカオスヒートのリングで春日野日向を完全に蹂躙した事は彼女の記憶にも新しい。
レフェリーの促しでリング中央に歩み寄る両者。
改めて見るとその対格差は歴然としている。余裕の笑みを崩さないエリオットを美紗は気丈に見据える。
ここでレフェリーからルール説明がされる。
「今回の試合は無制限一本勝負、フリーノックダウン、ロープダウン無し、ダウンからの引き起こしOKです!」
『な・・・なんですって・・・!』
観客の歓声と裏腹に、ルール内容を聞き麻里奈の表情がさらに強張る。
それは明らかに美紗を公開処刑する、と言っているのに等しい内容であったからだ。
「はは・・・これはヤバいわね。」
マイペースな美紗もエリオットのヤバさに気づいたのだろう。コーナーへ戻ってきた彼女はいつになく真剣な表情であった。美紗の言葉に麻里奈は返事を返せずにいた。そんな麻里奈を見て美紗はいつもの笑みを浮かべる。
「まあ・・・ヤバいけど勝てない、とは思ってないから。」
カーン!
ここで試合開始のゴンが鳴り、美紗はリングへと進んでいく。そしてその途中でくるりと振り返った。
「まあ、待っててよ麻里奈。あんなヤツすぐにやっつけちゃうんだから。んで200万円もいただき♪」
美紗は勝気な笑みを浮かべながら再びリング中央へダッシュしていく。
その先に地獄の展開が待っているとも知らずに・・・