その現存する最古の吸血鬼は、
他人に干渉することも、干渉されることも好まなかった。
だから、コミュ障だった。
礼を述べ、身を清め始めた少女たちを前に、彼女は迷っていた。
声をかけるべきか、それとも黙って去るか。
そんな彼女がふと気づく。
いま礼を言われた。つまり、やり取りにひと区切りついた。これは黙って帰る絶好のチャンスだ。
本来ならそろそろ寝ている時間だ。空が白む前に、柔らかいベッドで丸くなっていたい。
というか、もう眠い。しんどい。無理。
――彼女が去ろうとしたその時、少女たちの「ジョブチェンジ」の能力が発動する。
致命的な油断。
明らかに常軌を逸脱した力。
自身よりも高位の存在――おそらく神から与えられた、なんとも形容しがたい、卑猥で劣情を誘う加護。
思わず、眠気が3割ほど吹き飛ぶ。
何より、その場違いで見慣れない男受けしそうなツッコミ待ちの衣装。
しかしどうツッコミすべきかわからない。ひきこもりには荷が重すぎる。
結局、彼女は城に帰るタイミングを完全に失っていた。
…そして少女たちが戻ってくる。
弔いを終え、傷心と不安を顔ににじませながら、尋ねてくる。
「これから、どうすればいいでしょうか?」
――彼女の内心で、悲鳴があがる。
干渉はしたくない。会話も疲れる。
そもそも、寝たい。
だが、眷属にしてしまった以上、完全には突き放せない。
…しばしの沈黙ののち。
彼女は、当面の城への滞在を許可した。
・前回
illust/132591144・次回
illust/132851161キャラ設定①-ポニーテール少女
illust/131528138キャラ設定⑥-異世界の神
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