わかる?ほんとうの『ぜつぼう』を。
それまでのじぶんがかんぜんにころされて、じぶんではない『だれか』にかえられてしまう。
そんなきょうふをりかいできる?
だれもじぶんのことをわからない。
じぶんさえもじぶんのことがわからない。
みうちがしんだ?だからなに?
そんなの『ただかなしいだけ』でしょう?
そのときはかなしいだろうけど、『そんなもの』はじかんがたてば、だれだってやがてなれるていどのもの。
じぶんがそこにいても、だれもじぶんだとにんしきしてくれない。
じぶんがなにかいっても、だれもそれをしんじつだとりかいしてくれない。
じぶんがもっていたはずのものはすべてうしなわれ、なにもじぶんをじぶんだとしょうめいできない。
それがほんとうの『ぜつぼう』。
そのうえでわたしのばあい、つよすぎてみずから『し』をえらぶことすらできなかった。
……『きせき』だったのは、わたしたちがたまたまそのぜんじつにおこなっていた『しゅじゅうけいやく』によって、そのつながりによって、さきとめあのふたりだけがわたしをわたしだとりかいできたということ。
それさえもふたりがつよくのぞんだからこそ、しかたがなくおこなっていただけもの。
わたしのいけんだけだったならば、ぜったいにおこなうつもりはなかったもの。
そして、もしもそのけいやくをかわしていなかったならば、さきとめあでさえもわたしのことをわたしだとりかいできなかった。
そんな、かみひとえの『きせき』でわたしはここにたってる。
それがなければわたしはきっとだれとのこうりゅうもたって、みずからをころすためのどりょくをつづけていただろう、そんな『ぜつぼう』のふちにわたしはいたよ。
【以下、補足】
咲が警戒していたように、ヨルもまた梓のことを自らを害なす存在だと特に理由は無いものの直感で気づいているため、かなり辛辣です。
なお、梓本人にヨル達を害する気持ちは特に自覚していません。