出版社に持っていく企画書の作成を始めました。
私鉄ネタ。
国電沿線で私は生まれ育ったのに、なぜか昔から私鉄に萌えます。それも、軌道法発祥のやつ。1950~60年代の、路面電車に毛が生えたくらいの郊外電車のことを思うと、胸がきゅんとなります。あ、消臭剤をまかないでください。
起点駅を出るとしばらく路面を走り、郊外は専用軌道……なんて感じの電車、萌えません??
半鋼・半木造の車体、窓の上下にはシルヘッダー。深い屋根はグレーの布張りで、ライトはオデコかヘソにでかいのが1個。トロリーポールかビューゲル集電がいいですね。
路面から専用軌道に入ると、今よりずっと早くビル街は果て、窓には畑や農家、雑木林が映ります。
空はとても広くて、雲の形が季節ごとに変わります。
トンビが旋回しています。ヒバリの声が車内にも届くかもしれません。
クワアァーン…と軽快な吊りかけ音を響かせて農村を走り、小さな駅をこまめに拾っていきます。
駅といっても、ほとんどは駅員のいない停留所みたいなもの。乗降客がいなければ、電車は減速するだけで通りすぎます。
やっぱりチンチン電車のノリです。
そんな感じでいくつかの駅を飛ばし、緑が深くなってきたあたりの駅で停車。
のどかな平屋建ての民家が集まった村落が、畑の向こうに見え、下車した人たちはそこへ向かって歩いていきます。
警報機のない踏切では、ずんぐりした猫背のセダンが待っています。自家用車もずいぶん普及してきたようです。
うっすらと茜色に染まりはじめた夕空の下、家々の軒先からは、あたたかい晩ごはんの香りが漂ってきます。
ポヒョーッ!という間の抜けた警笛を鳴らし、電車は野原の向こうに駆けていきました。
……てな感じの文章と、今回の絵をご覧いただいた後、
「ぬおお~~! 忘れかけてた武蔵野の面影! あるいは摂津野の面影!
やっぱりこうだよなあ~! こうでなくちゃいけねぇよなぁ~・・・・
父さーん、母さーん、ただいまぁ~・・・・・うるうるうる……」
……ってなりましたか?
……ならないでしょうね。
遠森慶がそんなまっすぐなもの書くわきゃーない、
と皆さんすっかりお見通しだ。まいりました!
そーです。これは武蔵野でも摂津野でもありません。
日本じゃありません。
ロサンゼルスの都心から郊外に向かい、1961年まで走っていた「パシフィック電鉄」です。
でも、すっごい日本くさいでしょ。この屋根とか、窓周りとか、色とか。
東急のゴトーさんとか阪急のコバヤシさんといった、日本の私鉄王の人たちが、若き日にパシ電を視察し、いろんな要素を取り入れたからなんでしょうね。
でも皮肉なことに、インターアーバンの本家アメリカでは、モタリゼのあおりで私鉄文化が退廃、弟子にあたる日本が、のちに世界一私鉄の発達した国になるんです。世の中わからんものですねーー^^
ちなみに、イラストの女学生の服装や髪形、文章の内容など、電車以外のものもすべて1950年代後期のロサンゼルス郊外のものとして検証済みです。昔のセドリックに見えるのはフォードです。
「じょがくせい」という響きが好きです。