ピンクの猫が笑っている
青いポストの上で
八分音符のフォルムを空に掲げ
ピンクの猫が笑っている
ふと気付くと右手がなくなっていた
これは困った
右手がなくては左手が寂しがってしまう
どこに落としてきたのだろう?
昨日丸まった時だろうか?
それともバラバラになった時だろうか?
右手はどこだとくるぶしに聞いてみたが
彼はうんともすんとも言いはしない
もっとも起きるより先に眠ってしまったから
饒舌なまでに無口なのは仕方がない
だから私は旅に出よう
カバンにたくさん夢を詰め
右手を探す旅に出よう
青いポストの上で、
八分音符のフォルムを空に掲げ、
ピンクの猫が笑っているシールがついたキャリーバックに、
右手以外の”のこり”を詰めて、
彼の…元彼の右手を探す旅に出る。
…ああでもほんとどこで落としたんだろうか?
寝室で殺ったときかな?
それともお風呂場でバラバラにしたときか?
…ともあれ彼のアパートにもう一度行って、
詰め忘れた右手を探さないと。
あんなもの他に誰かに見つけられたら捕まっちゃうよ。
うっかりしてないでがんばらないと。
完全犯罪の夢はもうすぐそこなんだから。