コウくんとカラオケに行く前の晩、私は卒業式の日の夢を見た。
…本当は私、八木くんのことそんなに嫌いじゃなかった。カッコよくてクラスの中心人物。そんな人が冴えない自分を気にかけてくれる。そのことにちょっとした優越感を抱いていたのだ。
だから趣味が合わなくても、取り巻きに「調子に乗りやがって」と馬鹿にされても、友達ができなくても、一緒にいることが出来た。
でも、そのことを何も知らない八木くんを見ると酷く惨めな気持ちになった。
そして、卒業式の日。私は取り巻きの女に八木くんには彼女がいると告げられる。
仲のよさそうな写真を見せられて、(そっか、からかわれていただけなんだな)と、思った。そしたら今まで我慢していたものが我慢できなくなった。
そのあと、八木くんに屋上に呼び出されて告白された。
ふざけんな!
私は今までの我慢を晴らすように、八木くんに言いたい放題言って。すぐに逃げて。
そのまま二度と会わなかった。
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そんな夢を見た。
今思い出しても恥ずかしい、陽キャのイケメンに優しくされて、舞い上がって勝手に期待した黒歴史だ。
八木くんはとっくに忘れているだろうな。
…私のことが好きだなんて、そんなことないのにね。あーあ、寝なおそ。