山奥の岩穴で雨宿りをしていると、旅芸人のような出立ちの若い娘が入ってきた。娘に昼飯を分け与えると、娘はお礼に三味線を片手に歌い出した。
娘の歌う、かつて大江山にて人を攫い、悪虐の限りを尽くした人食い鬼の歌は恐ろしくも、一抹の寂しさを感じさせた。
娘が歌い終え、気がつくと雨は止み雲間から日が出ている。振り向くと娘は既に消えており、蝋燭に照らされた岩陰が鬼の頭のように不気味に揺らめいていた。
針の音楽様のアレンジアルバム、音降る幻想郷に寄稿させていただいた作品です。
https://youtu.be/p9r19jRzKWA