多謝!のんちさん(
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黄昏どきのダウンタウン。ひと気には満ちているがどこか陰惨な空気が漂う。
路上に満ちているのは、獣人や人間の雑多な連中。笑い声は獣人たちを覗けば皆無だ。
獣人「実際よくやったなあ、おまえは。俺ら相手によく食い下がったよ」
そう言われたのは屈強な青年。嬉しそうには見えない。
獣人「人間にしとくには可哀想だ。俺らに仲間入りしねえか? 食いもんにも女にも不自由しねえぜ」
無言で青年はツバを吐き捨てた。
獣人「それが答えか。…試合続行だ」
笛とともに、立ち塞がる獣人たちのガードを悉く無視し、青年はゴールの前に立ち、言なさげにダンクシュートを決めた…はずだった。
そこによじ登っていたのは小獣人だ。アイスピックを手にし、それで青年のボールに突き刺して蜂の巣にしていた。小獣人はけたたましく笑い、ボールだったボロをひらひらと風に乗せたまま残念ポーズをとった。
獣人「やれ」
獣人のリーダーが人差し指を下げると、見る間に青年は背丈を失い、着ていたポロシャツとスラックスの中に埋もれた。そして彼は、ぎょろついた瞳の痩せぎすな黒猫となって出てきた。
爆笑する獣人たちをリーダーは制し、道を開けさせた。
獣人「すばらしい挑戦者に拍手を贈ってくれ。今は無様な痩せ猫だがな」
哄笑のなかを、痩せ猫はゴミ捨て場に消えていった。
サリナ「これも異世界?」青空の下、大通りにたどり着いた彼女は目を見開いて言った。
鍔芽「スライムもエルフもいないけど異世界。よくあるコトだよ」
サリナ一行は大通りを進む。身なりといえばサリナは手に入った学生用ブレザーを着ている。セーラー服でない点は彼女の不満だが、贅沢は言えない。桃花もクリーニングに出した制服にこだわり、鍔芽の身軽な体操服に着替えていた。
鍔「むしろサリナは、魚月がいないコトのほうが気になってそーだね」
桃花が首を出す。桃「昨日は大変でした。いちいち魚月さんのキスで亡くなられるサリナさんですもの、回復魔法をあれだけ使うのは戦場にいるときだけです」彼女はスーツケースを運ぶ重さも意に介さず、くすくす笑う。
サ「(ぶすっ)あたしは石片が心配なんですっ!魚月ちゃんも仲間に認められたのに…」
鍔「はは…みんなで旅するのだけが連帯じゃない。事件後の監視もりっぱな仕事だ」
サ「…でも、活気のない町だねえ…みんな笑ってない人たちみたい」
律子「(ぴょこん、と顔を出す)町長のせいだよ」
サ「んぐわっ!なによあんた」
律「ボクは相葉律子。むかしはここもいい町だったのに、ギュウコのせいだ。「ダンク主義」なんてひどい悪法を立ててさ」
桃花が後ろから慌てて言う。桃「まずいですわ!政権批判なんて真っ昼間の大通りでやるなんて」
律「もちろん聞こえるように言ってる」
サ「ナニ言ってんのよこのアホガキは!」
そして、律子の思惑どおり獣人兵がやってくる。
獣「あー貴様ら。ギュウコさまに言いたいコトがあるならこっちへ来い。聴かせてもらおう」
サ「あー、やっぱ掴まったじゃない!律子ちゃんとか言ったよね、何のためよ」
律「(にっこり)快諾してくれて有難う。ボクは歓迎するよ、石片に導かれた仲間を!」
そして、律子は歯を見せて笑った。