一ヶ月以上も遅れてのお盆のお話。
お祭りから帰宅中である(勝気な個体の)古鷹さん…ふと例の河へ立ち寄ることにした。 そこはお盆の季節になると、先の戦争で亡くなった人らを弔うための…精霊流しをするので有名な場所だ。 ちょっとセンチメンタルな想いを抱きながら、河にかかる橋を見てみると…明らかに人外の類がいるではないか?
どう見てもヤバい…それどころか、人類滅亡の危機を引き起こすようなオーラ丸出しの化け物にしか見えない。 だがしかし…神妙に手を合わせて何かを祈る様子に興味を覚えた古鷹さんは…恐れもそっちのけて、自ら近づいていったのだ。
古鷹「こんばんわ…いかした背びれのおじさん。誰のために祈ってるの?」
???「・・・・・・・・・・・・同胞に、『永遠の死』を強いられる…同胞らに、届かぬ祈りを…。」
古鷹「ふ~ん、そっか…。」
暫くの沈黙の後、ボソボソとそれは古鷹へ話し始める…。
???「実際には、ある場所で、今なおも、凍結されておる…だけだ。 だが…それでも…祈らずには、おられんのだよ…。 ただ一つだけ、無様に逃げ延びた、我れが祈ってやらねば…フッ、実に女々しいであろう?」
古鷹「いや全然…寧ろ仲間の為に祈れる優しい心の持ち主だと分かって、正直安心したよ。 おじさん…あんたはいい奴だね。」
???「・・・『いい奴』…なるほど、そうか…『いい奴』か。」
ほんの少しだけ苦笑したのは気のせいであろうか? その後は一言も喋らずに、黒き者は橋から静かに立ち去っていった。 あれが自分達に災いを齎す存在であるのは、確定的に明らかであるし…その時が来たら躊躇なく滅ぼすべきものであるのも、古鷹は理解してはいる。 …でも自分だけは…あれが『いい奴』であることを忘れないでおこう…そう思いながら、古鷹は改めて手を合わせて精霊が乗る小舟へ祈ることにした。(完)