この話は、
海洋巨大ヒロインKAILI💕第10話二章 |
illust/134533376からの続きです。
2099年10月【秋】
海里の父親「白波 健吾」の通夜が終わり、
火葬当日。
火葬場の昇っていく煙を見ながら
鯱島
illust/132683893「あー、やっと終わったな。」
いつもの『シークレット・B』の制服の黒帽子に黒の上下スーツの鯱島。
岬 竜太
illust/132683046「ええ、終わりましたね。」
今回は、喪服の岬。鯱島と共に芝生に腰を下ろして寝っ転がる。
海里・レッドシャーク
illust/132682700「鯱島さん、リュータごめんなさい。もう大丈夫。」
そう言って駐車場のバンから、ヨロヨロと出てくるも喪服の海里。
岬
「無理するなよ。もう火葬も終わったし帰り支度を始めるからもうちょい車の中のベッドで休んでてよ。」
※鯱島のバンは、シートを変形させ簡易ベッドにすることも出来るのだ。
海里
「大丈夫、大丈夫だから。」
そうは言うが、やはり足取りはおぼつかなく不安を感じる。
無理もない。せっかく生き別れの父親に会えると思ったらその父親は「ガン」で、面会を果たせたのもつかの間、目の前で血を吐きそのまま帰らぬ人になってしまったのだから。その絶望はあまりにも大きくあの気丈な彼女がお通夜をバスし、今日の火葬の日まで床に伏せていたのである。
海里
「鯱島さん、この度は色々とありがとうございました。」
鯱島
「コレも仕事だ。気にすんな😊」
そして駐車場横の芝生で寝っ転がっていた鯱島と岬の横に座り込む海里。そして二人と同じように寝っ転がり空を仰ぐ。
海里
「とうとうお父さん、灰になっちゃった…
せっかく地球まで会いに来たのに何やってんだろうわたし。
やっばりお父さんとは会わない方が良かったのかな…
だってまだ1ヶ月あった命を、早めて死なせてしまったんだもん。
岬
「海里ちゃん、そんな自分を責めるのは……」
横で寝そべっていた岬が飛び起きる。
海里
「だってだってあんなに優しかったお父さんがもういないのよ。あたしの名を呼んでくれるあの優しい声ももう聞く事は出来ない。あたしを優しく包んでくれる人がもういない……」
岬
「海里ちゃん、落ち着いて。」
落ち着かせようとするが、泣きわめく海里。なかなか泣くのがおさまらない。オロオロするだけで何も出来ない自分…
岬
(考えろ!考えろ竜太!今こそ海里ちゃんのお父さん白波さんとの約束を果たすんだ!)
しばし悩んだ挙句、意を決したように海里に声をかける岬。
岬
「海里ちゃん!泣きたい時は泣こう!
俺も一緒に泣くから。実は俺も今泣きたい気分なんだ。あんなに優しい君のお父さんが亡くなって俺もすごく悲しい。今回話してみて俺もすごく君のお父さんが好きになったんだ。君のお父さんは、俺に「娘のチカラになって欲しい」と言ってくれた。そう君のお父さんはオレを認めてくれたんだ。君を助けられる男と認めてくれた。そんな人ともう会えないなんて…これほど悲しいことはないよ。」
海里
「リュータ。お父さんのことを…思ってくれて……ぅわあああん おとうさーーーーん」
岬の胸に顔を埋め泣きじゃくる海里。
岬も海里を受け止め、空を仰ぎ共に泣いた。
そしてしばらく泣き明かした後 岬が声をかける。
岬
「少しは落ち着いたかい海里ちゃん。」
海里
「うん……」
岬
「なら良かった。俺も一緒に泣かせてもらったんでスッキリしたよ。」
海里
「あなた男でしょう。カッコ悪いったら。」
突然口をひらく鯱島
鯱島
「さっき海里ちゃんが面会したことでオヤジさんの死期を早めたって言うが、自分に会いに来てくれた生き別れの娘と話すために残りの命を使い切った結果死期が早まったのならそりゃあ本望ってもんだ。海里ちゃんが気に病むことじゃねえ。
俺だって、同じ立場ならあのまま希望も無く寝たきりで死ぬより、最後のチカラを振り絞る方を選ぶね。」
海里
「毒島さん……」
鯱島
「帰りは俺が運転してやる。
岬は、泣き虫姫さまをなぐさめる役だ。
さあ、帰るぞ。」
帰りのバンの中 運転は鯱島。後部座席に岬と海里。走り出してしばらくすると海里は泣き疲れて岬の横で寝息を立てていた。
海里が寝たことを確認すると、岬が鯱島に話しかける。
岬 竜太
「それにしても海里ちゃんの親父さん、清々しいと言わんばかりの安らかな死に顔でしたね。」
鯱島
「そりゃあ、余命1ヶ月って時に『生き別れの娘』と『その娘のお相手』が会いに来てくれたんだ。余程嬉しかったんだろうよ。」
岬
「イヤ、だから俺らはまだそんな関係にまで行ってなくてですね…」
鯱島
「いいじゃねえかそれで。海里ちゃんのオヤジさんの勘違い、それでいいんだよ。その勘違いのおかげで、あの安らかな死に顔だ。俺はな、オヤジさんの前でお前が宣言した「命をかけて彼女の役に立つてみせる」あの一言でオヤジさんの心は救われたんだろうと思ってる。我が子の行く末ほど、親は心配するものだからな。」
岬
「そうですね……」
「それにしても今回、海里ちゃんのお父さん(白波さん)の記憶を取り戻すことの許可がよくおりましたよね。」
鯱島
「海里ちゃんが申請していたアレな。
俺の憶測だけど多分 余命幾ばくもないから許可が降りたんじゃないかと思ってる。
オヤジさんがピンピンしてたら微妙なとこだったかもしれん。」
岬
「あと1度消した記憶を回復させるっていう
M星
illust/132682122の技術も凄いですよね😲」
鯱島
「『 記憶消去』と言ってるが、正確には違う。
イメージとしては、『記憶の引き出し』に対し部分的に『鏡』をかける感じだな。だから記憶を戻す時はその『鍵』を開けてやれば言い訳さ。その『鍵』が、この端末の画面に現れるバーコードの数字の羅列だ。この羅列をみせれば、鍵がかかった部分が解錠され記憶が戻るという寸ぼうよ。」
<10話四章へ続く>