「ねぇ優希ちゃん、次はあの店に行こっ!クレープがおいしいんだってー!」
楽しそうに店を指差す友利(=メリア)。一方、何故か口元を押さえてややグロッキーな優希(=ルミナ)はフラフラと友利のあとを歩いていた。
「ゆ、友利さん…ちょっと待っ…」
「ん?どしたの優希ちゃん」
「さすがに連続でスイーツ店をハシゴするのは…うっぷ…ちょっとキツイです…友利さんは平気なんですか…」
せり上がってきそうなモノを抑え込むようにして声を絞り出す優希。シュークリーム、パンケーキ、あんみつ、パフェ、その他諸々…もう何軒目だろうか。
「あぁ、そういえばたくさん食べたね〜。いつも捺希の大食いに付き合ってるから、あたしの満腹神経ちょっとおかしくなったみたいなんだよね、あははっ。じゃあ次は食べ物以外の所に行こっか!」
(いやいやいや普段どんだけ食べるの捺希さん!あぁでも、やっと食べなくて済む…)
優希がほっとしたのもつかの間、友利がとある店を指差した。
「でも、最後にあのお店に行っていい?お願いっ!」
指差す先を見ると、やはりスイーツの店だった。
「もうこれ以上食べられないですよぉ…!」
もはや店を見ることすらツラい優希は、思わずぺたんっとその場にへたり込んでしまった。
その様子に、友利は腕を組んで心底残念そうな表情になった。
「そっかぁ、あの店のアイスはどのガイドブックにも載ってるぐらいの評判らしいけど…もう食べれないなら仕方な…」
「行きましょう友利さん!」
優希はキリッと立ち上がると、競歩ばりのスピードで店の方に向かって行った。
(おっ、復活した!優希ちゃんの大好物のアイス、最後にしといて良かった〜♪)
張り切りる友人の後ろ姿に、内心ほくそ笑む友利であった。
広くもなく狭くもない店内はほどよく空いていた。カウンターで注文したアイスを受け取った二人は窓際の席に座った。人の往来や街並みがよく見える位置なので、景色も楽しめそうだ。
「おいひぃれふぅ」
ワッフルコーンに積み上がったトリプルアイスを満面の笑みで堪能する優希。その様子に友利は楽しそうに笑う。
「ふふっ、優希ちゃんてほんとににアイス好きだねー」
普段は大人びている優希が見せる、年相応の一面。
「…いわゆるギャップ萌えというヤツかな、うん」
一人で納得する友利であった。
「はふ?なんれふか?」
「ううん、なんでもないよ♪ それより優希ちゃんと会ったらお願いしようと思ってたことがあるんだ!この動画見てっ!」
そういうと、友利はおもむろに携帯端末を取り出し、優希に画面を向けて動画を見せる。そこには、某人気女児向けアニメの主人公二人が変身するシーンが映し出されていた。
「この変身シーンすごく気に入っちゃってさ、もう何回も観ちゃうんだよね〜」
そう言って頬杖をつき、うっとりと動画を眺める。
「そ…そうなんですか…」
その様子にアイスの幸福感から現実に引き戻された優希。嫌な予感がする。
「ねぇ優希ちゃん」
「…なんでしょう…」
「お願い!この変身シーン一緒にやって!」
ぱんっ!と目の前で手を合わせて懇願する友利。やっぱりか、と目眩を覚える。
「イ、イヤです!恥ずかしいですよ!」
「えーっ!カッコイイのにー!」
「こんなプロセス踏まなくてもわたし達変身出来るんですから、普通にいきましょうよ…!?」
「いつもと違う変身の仕方でモチベーションアップにもなるじゃん!」
「わ、わたしは普通に…」
「優希ちゃんしか頼める人いないの!お願い!」
「うっ…」
元来、頼み事をされると断り切れないところがある優希は、結局いつも人のために損をするタイプの優しい子であった。
「……分かりました…」
がっくりと肩を落として答えると、友利の顔がぱぁっと輝いた。
「ほんとっ!?ありがとう優希ちゃん!やったー!!」
優希の手を取りブンブンと上下させる友利。そして、いそいそと服のポケットから紙切れのような物を取り出した。
「はいこれ!あたし達に合うように台詞を変えておいたから覚えてね♪」
そう言って、台詞の書かれたメモを優希に渡す。
「じ、準備が良いですね…」
渋々メモを確認している時、ふと小さな希望が光った。
(あ、そうか…友利さんと一緒にいる時に敵に遭遇しなければいいじゃない!今日は早めにさよならして、友利さんが約束を忘れる頃まで会うのは控えて…)
その時、轟音と共に地面が揺れ、ビルの合間から突如怪獣が出現した!さっそく街を破壊し始める怪獣に、人々の悲鳴がこだまする!
「……えぇぇ…」
「うわっ、大変だ!こうしちゃいられないっ!」
友利は唖然としている優希の手を引き、二人は店を飛び出した。
避難する人々の波をくぐり抜け、人影の無くなった街を疾走し、怪獣の前に立ちはだかる。
「さぁ、優希ちゃんっ!」
無駄に眩しい笑顔で、力強く頷く友利。
「うぐっ…もうやぶれかぶれですっ!」
意を決した優希は友利に頷き返した。そして腕を突き上げ、二人は高らかに叫ぶ!
「「デュアル・オー○ラ・ウェェェイブ!!」」
二人は手を繋ぐと天高く伸びる光の柱となった。そしてその中から二つの影が現れる!
「光の戦士、ウルトラメリア!」
「光の戦士、ウルトラルミナ!」
「「ふたりはウルトラレディッ!!」」
一旦決めポーズ。続けてそれぞれビシッと指を差す!
「地球の平和を乱す者たちよ!」
「もうお家には帰さない!」
最後の台詞を言い終えて2秒ほど静止したのち、友利ことメリアは感極まって体を震わせた。
「くぅぅ…決まった….完璧だよルミナちゃんっ!!」
「うぅ…それは良かったです…グスッ…」
片や一気に込み上げてきた羞恥心で体を震わせる優希ことルミナは、耳まで赤くしながら消え入りそうな声で答えた。若干涙目である。
「じゃあいくよキュアルミナ!さっさと片付けてスイーツ巡りの続きだぁ!」
「あぁっ…キュアって言っちゃった…ていうか、もう食べられないですってばー!」
その後、無事に怪獣を倒した二人はなんと再びアイスの店に戻るのだが、今度は必殺技の動画を見せられたルミナはメリアに奢られたアイスを持ったまま全力で逃走したのだった…。
『相互リクエスト企画作品』
もに太さん
user/2214003からリクエスト頂いた作品です。