…私は飲んだフリをしたグラスを置いた。
こいつはどこまで馬鹿なんだ。「許す」?許しとは罰を受けた後の人間が与えられるものだ。
彼は私に何をした?謝罪をしたか?取り巻きに罪を償わせたか?私の青春を取り戻してくれたか?
いいや、何もしていない。彼は最初から最後まで自分のことばかりだ。そして今も、さも自分が世界で一番不幸であるかのように泣いている。
もう我慢が出来ない。「好きだった」にも限度がある。ああ、「コウくん」のままで居てくれたら良かったのに!知らないふりをしていてあげたのに!
「…八木くんは相変わらず人の話をきかないね」
「え、うん。気付いてたよ?普通わかるって(笑)…高校生活台無しにしたやつの顔はね」
「今まであんなイキってたやつが、必死に媚び売ってくる姿が面白くてさ、つい黙ってたの」
「『一緒に居たい?』…なーにを言ってるんだか。そういうところだよ、自分一人で盛り上がっちゃってさ」
「きもちわる…。ホントに、何がしたかったの?」
「『ごめんなさい』?…何が悪いかわかってる?」
「私あの三年間、あなたのせいで友達ができなくて、あなたの取り巻きたちに虐められてたんだよ?」
「好き好き言ってたくせに、ずーっと気が付かなかったね。卒業式の日まで」
「それをさぁ、何の解決もしないまま、『好きだ』?『付き合って』?…」
「ばっかじゃないの」
「何度でも言ってあげる。馬鹿じゃないの?趣味が合わないだとか許す許さないとかの問題じゃないんだよ」
「…何だかグラスをチラチラ見てるけど、私飲んでないから、当然でしょ」
「ホントに、ホントに!いつも被害者ぶりやがって!そう言うところだよ!?」
「あの時の言葉もう一度言ってあげる!」
「どれだけ人を馬鹿にすれば気が済むの!もうウンザリ!迷惑なのよ!気持ち悪い!」
「あんたなんか嫌い!大っ嫌い!!!!!!」
「あ」