後日、私とコウくん。もとい、八木くんと私は付き合うことになった。
あの卒業式の日のことを話し合うとお互いがとんでもない勘違いをしていたことに気がついたのだ。そして、両思いであることも。
ジュースに睡眠薬を盛られたことにはぶっちゃけドン引きしたが、八木くんが土下座して謝ってくれたのでとりあえず許すことにした。
…私だって八木くんがオタクのフリして近づいてきたのを知らないふりをしていたのだから、お互い様だ。
正確には途中で様子がおかしいので正体に気が付いたが、この関係が崩れるのが怖くて見ないふりをしていたのだ。
好きな人が(なんでか変装して)隣にいて、自分の好きなことをしてくれる。それが嬉しくてズルズルとこの関係を続けてしまった。
こんな一方的に無理をさせる関係はきっと、遅かれ早かれ駄目になっていただろう。
八木くんはオタクのフリを辞めた。ちょっと寂しいけど、趣味は人それぞれだ。そして、少しずつ前みたいに好きな音楽の話なんかをしてくれるようになった。私は正直興味が無かったりするけど、聞いて、思ったことを言ったりする。…これが、高校の時に出来ていたらなぁ。
八木くんは前のように明るくてちょっと強引な性格に戻った。でも、時々酷く怯えた目でこちらを伺うことがある。何でもない会話の時に謝ることがある。
その度に、私は「ちゃんと話して」と八木くんと…「私」に話しかける。
…私たちは、趣味も合わなくて多分相性も悪い。
これからも一杯すれ違いや、ままならないことが起きるだろうなと、思う。
八木くんは私が自分を嫌った理由がわからないだろうし、私は八木くんがなぜ私を好きになったかがわからない。きっとずっとわからない。
でも、一緒に居たいのだ。
私たちは分かり合えない。
でも、話し合って、伝え合って、許しあうのが、愛ってもんじゃないかな?
なんて、私は思うのだった。
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……調子、良すぎかな?でも私、幸せだよ。