「いや、だって彼女がいたし…」
……何を聞くかと思えば、「彼」には黒歴史過ぎて言って無かったが。この際だから話しておくか。
「あのね、好きか嫌いかで言ったら、まぁ…大好きだったんだよ?」
そうだ。私は彼に、今聞かれて今考えて今思えばだが…「好意」を抱いていた。
「でも、彼女がいるんじゃ、どうしようもないじゃない?」
でも、私にはその「好意」を押し通す力も、根性も、無かった。それだけのことだ。
「彼女いるのに、あんなふざけたこと言われて…。つい、かっとなっちゃったんだよね」
あれは結局のところ、醜い嫉妬からの八つ当たりだった。
「それで、…え、何その顔。どうし、…」
…あれ?…ねむ、い……。
急速に狭くなる視界の中、彼が泣くように笑っていた。